「決めの問題」の7割は辿り着くまでの道を舗装しきれば決められると思う
自分が心がけていることについての備忘録。
「決めの問題」という言葉がある(と思っている)。仕事でいつの間にか使うようになっていた。用例としては「メリット/デメリットが同じくらいの物事が複数あり、どちらを選んでもいいが、どれかひとつに決める必要がある」ようなシーンで「これは決めの問題だな」と言ったりする。
一応、webでいくつか記事があるので、まあまあ認知のあるキーワードのようだ。
- ビジネスにおいて、「決めの問題」というのはどういう意味なのでしょう... - Yahoo!知恵袋
- 「『決め』の問題だよね」と言われることがふえて。|蒔野真彩(Maaya Makino)|note
- 「決めの問題」の意味 - (O+P)ut
正解などない
サラリーをもらう人間として社会に出て早くも10年くらい経つが、5年目くらいの時のタイミングで、ふと気付いたことがある。
「この問題に対する答えは、上司も持ってない」
恥ずかしながら、過去一時期の仕事の姿勢として、自分は上司が全ての答えを持っているように錯覚していたように思う。実際はそうではなかった。というか人間誰しも、神様じゃないんだから、物事に対するたった一つの正解など持ち合わせてはいない。それを自覚してから、自分の仕事のやり方は明らかに変わったと感じる。
例題・調べ物
例えば、「タスク管理ツールの導入をしたいので、調べて欲しい」と上司に言われたとしよう。
とりあえず表にする
社会人初期の自分は、多分色々と検索して、色んなツールの公式URLを調べて沢山リストアップし、少しの紹介文の引用と、評判の星マークくらいはつけて、表を作る。それを上司に提出し、質問する。「では、どれがいいですか?」
もうダメダメである。0点。地の底まで穴を掘って埋まりたい。これではただの検索結果画面の焼き直しなので、Googleの検索クエリ付きのURLひとつで完結できる。上司もほとほと困るだろう。結局、どれが欲しいのかを改めて調べ直す必要がある。
比較表にする
もう少しレベルアップさせてみる。ツールにはある程度主要な機能があり、また利用料がある。それらを一覧にし、各ツールの項目ごとの優劣がわかるようにする。表計算ソフトで並び替えできるようにしておくと便利かもしれない。だいぶ情報はそろってきた。この表を上司に提出する。「お好きなものを選んでください!」
うーん、50点。まぁさっきよりかなりマシだし、選ぶための足がかりとしては十分だ。ただし致命的な問題がある。これは上司に、端から端まで資料を理解することを強いている。Google検索結果よりかは時間短縮できるが、それでも引き出物についてきたギフトカタログを眺めまわしてどーしよっかなぁ、と熟慮するくらいの時間は必要だ。
上司の時間コストは、もちろん、自分より何倍も高い。上司の仕事は手を動かすことではなく、決めることだと思う。上の階層の人になればなるほど、そうなる。なので、あまり大量の選択肢に埋もれさせ、どーしよっかなぁと悩ませてしまうのは大変勿体無いことである。悩んでる間にどんどん決めるべきことは降り積もるのだから。
良いものを自分の意思で「決め」る
上司に時間をより効率良く使ってもらうために、もう一手間かける。自分が上司の代わりに比較表を眺め回して、どーしよっかなぁ、と唸る。今では、これが一番価値のある大事な仕事とすら思う。みていると、おそらく不要な選択肢が見えてくる。明らかに機能が劣っている、これは高価すぎ、これは求める必須機能がない…。そうして取捨選択し、選択肢をのこり2つか3つくらいまで絞る。絞る過程には必ず理由があるので、理由を書き留めておく。ここまできたら、ようやく「決めの問題」に辿り着く。
準備ができたら上司に声をかける。「タスク管理ツールについて、どれがいいか選んで欲しいので、説明のお時間をいただけますか」
これでようやく80点くらいの仕事ができたかなと感じる。上司にさせていいのはAかBかを選ぶという行為のみで、できるだけ悩ませないようにする。念のため副次資料として比較表はとっておき、上司から質問があればメリデメの説明のために使用する。 候補を1つに「決め」ることができて、上司にプレゼンし、うんと頷いてもらえたならばもう少し加点しても良い。ただ90点台はあげられない。この仕事方法には致命的に欠けている部分がある。
「うーん、ちょっと違う。」
もし、上司にそう言われてしまったならば、何もかもが振り出しに戻り、結果は0点と言わざるを得ない。
最初に質問しておくと吉
上記の流れの致命的なところは、一番冒頭のオーダーに戻る。
「タスク管理ツールの導入をしたいので、調べて欲しい」
あまりにも要求がフワッとしている。そのことをこの段階で気付き、まずは土台固めをするため、質問(ヒアリング)をおこなっていきたい。
- 何故タスク管理ツールを導入したいと思ったきっかけは何ですか?
- 必須機能のご要望は?
- 予算はおいくらですか?
- ツールを使うチームorメンバーは誰ですか?
- 今はどうやってタスク管理していますか?※
最後の質問(※)は、隠れた要望を拾うことを意図している。上司自身も気づいていない、明文化されづらい機能が必須のものとして扱われている可能性も考慮している。ほかにも、将来の利用者となる予定のチームメンバーにタスク管理方法についての不満や要望などを拾いに行くのも必要そうだ。そもそも求めているのはタスク管理ツールなのだろうか?というところから疑っていってもいい。このあたりのもっと入り組んだ話は別記事を過去に書いたことがあるのでそちらにおまかせする。
「〇〇が欲しい」のリクエストをそのまま飲み込まない - よもやま話β版
閑話休題。
質問によって、上司・組織が求めているものがハッキリしたならば、選択肢の中からひとつのベストチョイスを選んで提出できる可能性はぐっとあがる。また、どうしても選びきれない2-3択があったとしても、事前に把握している要点はクリアしているものばかりですと自信を持って言えるようになる。これだけやりきれば、まぁまぁの花丸にしても良いかなと思う。
まだ自分が上司視点を持ったことがないので、他にもやれることはあるかもしれない。ただ当面は、この「決めの問題までの道を舗装する」というのが、注意を払ってやっていきたいと思っていることのひとつである。