よもやま話β版

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「神々の山嶺」の漫画版を見てからアニメ映画見た

ネタバレ無しのつもり。 「神々の山嶺」というアニメ映画を観てきた。ちなみに"山嶺"とかいて"いただき"と読む。

longride.jp

根っこの原作は、夢枕獏先生による小説「エヴェレスト 神々の山嶺」。それを谷口ジロー先生が漫画化した「神々の山嶺」(1〜5巻)がある。それらをベースにしてフランスでアニメ映画化されたのが今回の『Le Sommet des Dieux』(仏題。英: The Summit of the Gods)となる。

この物語から面白さを嗅ぎ取るには、若干の予備知識が必要だ。"because it's there." ( 日訳「そこに(山/エヴェレスト)があるから」)の言葉はあまりにも有名だが、それを発言したのがG・マロリーである。彼はエヴェレスト登頂の過程、最後に山頂に向けて出発したところまでは史実として記録があるが、そこで帰らぬ人となった。ここで生きて帰ってこなかったという事実に多大な問題がある。彼は果たして山頂を踏んだのか、否か? 物語は、写真家・深町がこの謎を解きうる可能性を秘めた「マロリーのカメラ」を発見するところから始まる。

自分は体力1桁台のめちゃ弱々人間なので、そういう欲求とは無縁なのだが、山に魅入られた人たちの「初」に対する執念がすごい。未踏峰なら初登頂、誰かが初登頂したなら初ルート、すでに制覇されたルートならば、より厳しい条件をつけ、命懸けでその達成を目指す。マロリーのカメラを追ううちに深町が出会う羽生丈二という天才的登山家も、その考えにとり憑かれている。羽生の狂気的ともいえる山への執念の軌跡に、深町も一緒になって、山と羽生とに魅入られていく。

公開映画館数は少なめで、自分は普段行ってない映画館まで足を伸ばした。予約した段階ではまだ席が余っていたように思ったが、入ってみると満員御礼だった。また、50〜60代以上の方が多いように感じた。小説刊行が1997年、漫画完結が2003年、また内容も超一般層向けというよりはニッチなファン層に刺さるものかなと思うので、納得の客入り様相ではあった。

お話自体は大幅カット

自分は前から漫画版「神々の山嶺」に興味があったので、映画前に良い機会だと思って読破したが、そこそこにボリュームのある物語である。小説は文庫だと上下巻、漫画は分厚めのが5冊ある。まずもってこれを94分の映像に収めるのが到底無理である。その時点で想定はしていたが、体感、お話の6割くらいが見事に減量されていた。人間関係周りのウェットな部分はすっぱり割愛され、羽生の社会不適合ぶりが垣間見えるエピソードがほぼ失われた結果、転じて羽生の人間味が(比較的)増したように感じるというのは面白い点かもしれない。

迫力ある山脈の景色

お話がカットされた分、残酷なまでに美しい山々の風景の描写に力が入っていたように思う。体感したことはもちろん無いが、超高所の山というのは、酸素が薄くて、雪崩やクレバスなどの危険だらけで、ちっぽけな人間などカンタンに死んでしまう場所のようだ。人間が太刀打ちできない超自然の神秘的な美しさを、スクリーンの前で堪能させてもらった。ちなみに怖すぎるので絶対氷壁とか登れない。落ちる。高所恐怖症の人はこの映画を見ない方がいいかもしれない。

海外アニメと平成初期日本

登場人物の殆どが日本人ではあるが、それら人物をみていると「あっ、海外アニメだ」と感じるところがたくさんあった。ジェスチャーのせいだろうか。表情が豊かというか、目と手振りから欧米の空気感を感じた。あと、重要な登場人物が羽生から下の名前で呼ばれるが、原作では苗字呼びなので、そのあたりは海外文化ベースの再構築になっているようだ。うーん、日本人で羽生のキャラクター性なら苗字呼び一択な気がするんだけどな。致し方なし。

一方で、1993年の日本の街並みも描かれるが、これが凄まじく解像度が高かった。雑居ビル群が窓越しに見える喫茶店、夜に通過する電車の明かりが頼りの高架下、VHSに貼られた記録内容ラベル……。すごく懐かしい「平成初期」が見事に描いてあったように思う。一体どうやって取材したんだろう。でも、深町の家の本棚にあったゲームの設定資料集? は、多分フランスアニメーターさんの趣味なのかな。(うろ覚え)

ざっくりとした感想

気になっていたので衝動的に見に行ったが、大画面で冬山の厳しさを感じとるという体験はなかなか良かった。ただ自分は、「神々の山嶺」を羽生という人間の物語であると捉えていたので、色々カットされていたりしたところは結構ショックだった。特に最後のシーンが。完全にネタバレになるのでそこはふせったーに任せることとする。

とりあえず小説をしっかり読んで、あとは実写映画も見ておかねばと思った。そのうち読むし観る。